トップメッセージ

コロナ禍を乗り越え、「食」に関わる多様なサービスをお届けし、社会のインフラとしての役割を果たしてまいります

株式会社すかいらーくホールディングス
代表取締役会長兼社長
谷 真
 

2020年の振り返り

 2020年は新型コロナウイルス感染症による未曽有の危機に直面し、世界経済はリーマンショックを超える大きな打撃を受けました。レストランビジネス業界も直接的な影響を受け、当社においても店内飲食のお客様のご来店は著しく減少しました。一方、デリバリー・テイクアウトの需要は飛躍的に増加し、コロナ禍で消費者のライフスタイルは大きく変わり、テーブルサービスレストランを中心としたビジネスモデルの見直しを進める契機となりました。通年の業績は、減収減益の結果に終わりましたが、需要が増大するデリバリー・テイクアウトサービスの拡大強化に取り組み、同時に経費削減、設備投資削減等によるキャッシュアウトの抑制を実行することで、営業利益のマイナス幅を想定内の水準に抑え込み、速やかな業績回復に向けての収益力強化の準備を推し進めてきました。
 第三波による緊急事態宣言により、昨年末に向けて回復基調にあった業績は1-2月にかけて再び落ち込みました。宣言解除と自粛ムードが徐々に緩和される中、4月以降の速やかな業績回復に向けて、メニュー開発とプロモーション施策など万全を期して準備を進めています。店舗における感染症予防対策の徹底は継続の上、お客様に久々の外食を存分に楽しんでいただく光景を楽しみにしています。

中長期の成長ストーリー

当社の経営環境は新型コロナウイルス感染症影響に加え、少子高齢化に伴う労働力の減少や国内外の政治経済等、引き続き不透明な状況にあります。一方で、コロナ禍における消費者のライフスタイルの変化によるデリバリー・テイクアウトの利用機会の増加、専門店業態へのニーズの高まり等、多くの新しい需要が生まれています。このようなマーケットの変化に迅速に対応するため、経営基盤の強化と経営資源の最大活用を推進します。そして、外食・中食・内食まで視野に入れた暮らしの隅々にわたるサービスを提供する「食の総合型企業」への変革を遂げ、社会のインフラとしての企業価値を高め、「食」を通じたより一層の社会貢献を果たしてまいります。「食の総合型企業」への変革に向けては、次の3つを基軸として、3段階のフェーズで戦略を実行いたします。

  • デジタルトランスフォーメーションの推進
  • チェーンストアシステムの強化
  • 環境への取り組みの推進 

 第1フェーズ(2021年~2022年)では、高収益体制の確立を実現します。
コロナ禍での企業存続、及びコロナ後の業績回復と売上成長に向けての準備期間と捉え、生産性の向上、徹底したコストダウン、既存店売上の向上により、会社の損益分岐点を下げ、高収益体制を構築します。
 第2フェーズ(2022年~2025年)では、「食の総合型企業」に向けての新たな事業の研究開発と実験など、次の時代のビジネスモデルの開発を推進します。具体的には、外部資本へのフランチャイズビジネスの提供、通販・外販ビジネスへの参入、海外店舗の本格的な多店舗展開、また、2025年には団塊の世代が後期高齢者となる転換期を迎え、高齢者のご家庭や事業所への配食サービスなどの需要の増加が見込まれ、それらに対応する中食・内食事業への参入の準備をスタートいたします。
 第3フェーズ(2024年~)は、高齢者人口の増加と就業人口の減少による飲食ビジネスの転換期を迎える事になります。第1フェーズ・第2フェーズで着手・実行した事業の収益拡大をさらに推進すると共に、第3フェーズではM&Aによる会社規模の拡大を想定しています。「食の総合型企業」として外食に加え、中食・内食の事業領域においてもシェア拡大を目指します。

当年度の経営戦略

2021年は、昨年来実行中の施策の継続と強化を図り、既存店売上の拡充と徹底したコスト削減と全社生産性の向上を進め、会社の損益分岐点を下げ、高収益体制の確立いたします。

経営資源の最大活用

 全国約3,100店舗のスケールメリットを活かした食材調達・自社製造・自社配送といった独自のサプライチェーンである経営資源を最大限活用いたします。具体的には、から揚げ専門店「から好し」の商品をガストでも展開し、店内飲食、デリバリー、テイクアウトすべての売上を拡充します。また、ニーズの高い寿司を「藍屋」「夢庵」全店に導入し、店内飲食の取り込みに加え、寿司のデリバリー/テイクアウト拠点の一挙拡大を行います。この他、バーミヤンの看板商品である冷凍餃子のガスト全店での販売、しゃぶ葉のしゃぶしゃぶセットのテイクアウト販売等、各業態の売り物を多様な業態で販売し、店舗販売力のポテンシャルを引き上げ、既存店売上の向上を図ります。また、通販事業への参入も果たし、当社の購買力や自社工場を持つメリットを活かした商品の開発とサービス価値の向上を目指します。

デリバリー・テイクアウトの強化

 デリバリー・テイクアウトは、今後も需要拡大が見込まれ、全国に立地する3,100店舗をその拠点として最大限に活用することで新たなニーズの開拓と受注件数増を目指します。業態転換・エリア再編成による空白エリアの解消、小商圏化による配達時間の短縮、デリバリー/テイクアウト専門店の開発・導入、多様な業態をつなぐデリバリーネットワークの構築、メニューの拡充や価格設定の見直し、最低配達金額の値下げ等、サービスエリアの拡大と競争力を高める取り組みを強化し、売上拡大を図ります。

マルチブランドの強みを活かしたストアポートフォリオ/業態転換

 コロナ禍においては、食べたいものが明確で外食の楽しみを享受できる業態への支持が高まり、そうしたトレンドに迅速かつ柔軟に対応しています。カフェ業態のむさしの森珈琲、ハワイアンのLa Ohana、中華のバーミヤン、しゃぶしゃぶのしゃぶ葉、回転ずしの魚屋路等、目的来店志向の強い専門店業態への転換を進め、時代に合ったストアポートフォリオを実現し、地域毎の外食ポテンシャルを引き出します。

メニュー戦略

 「外食の楽しみ」「おいしさ」「健康」をテーマに商品開発を進めます。看板メニューの味をさらにブラッシュアップし、家庭では味わえない「プロの味」の追求や、昼間時間帯への生活のシフトに対応したメニュー提供、健康や栄養バランスを考慮した商品開発、天然素材の積極的使用や化学調味料の削減など、時代に合わせた商品を生み出し、お客様の支持拡大を目指します。

全社コスト・生産性の抜本的見直し

 メニュー改定頻度の見直し、食材の業態間での共通化などメニュー改革を進め、店舗人件費、生産性の向上、本部経費などコスト削減を実行します。工場の生産工程の見直し、配送頻度の低減、内製品の拡大、業態間の食材の共有化、食品ロス削減メニューへの改定等、原価低減に取り組みます。

デジタルトランスフォーメーションの推進

 全社生産性向上お客様の利便性に資するITデジタル投資を強化し、企業競争力を高めていきます。
 全社生産性向上は、店舗オペレーションやバックオフィス業務の効率化を図り、従業員の作業負荷を低減するとともに、店舗及び本部の生産性を改善し、将来的な人件費増加に対する耐性をさらに強化いたします。オペレーションの効率化やキャッシュレス決済多様化対応のため、セルフレジ導入店舗の拡大を含む新しい店舗システムの開発を進めます。また、従業員のデジタルデバイス利活用を促進し、コミュニケーションの円滑化と生産性のさらなる向上に努めます。
 お客様の利便性向上に向けては、「デジタルメニューブック」を更に業態を拡大し展開します。ご年配の方が多い和食業態においても従来型のメニューと併用することでお客様の利便性向上と店舗作業の生産性向上を図ります。また、すかいらーくアプリのユーザビリティの向上と機能強化により、よりパーソナライズされたお客様へのサービス強化を図り、プロモーション活動の徹底的な効率化を推進します。デジタルプロモーションシステムにおいては、新しいテクノロジーを積極的に導入し、お客様とのタッチポイントを強化し、お客様のライフスタイルに寄り添い、お客様との関係を強固に築き上げ、新規顧客の流入を促進するとともに、これまでのお客様の来店頻度の向上を目指します。

海外展開の進捗

台湾に63店舗を展開し、2021年内にマレーシアに3店、米国に1店出店予定
 日本社会の高齢化と人口減少に伴い、今後、成長が続く海外での店舗展開は企業成長に欠かせないと認識しています。現在、台湾に63店舗を展開し、昨年8月にはマレーシアに進出を果たし、しゃぶ葉1号店をオープンしました。新型コロナウイルスによるロックダウンなどの規制を受け客足への影響はありましたが、現地のお客様や出店モールのデベロッパーからの評判は非常に高く、年内に2号店・3号店オープンの計画が進んでいます。また米国においても今年の8月にしゃぶ葉1号店をオープンする予定です。「しゃぶしゃぶ」をはじめ、多様な業態を保有する強みを活かし、世界の多彩な食市場に最適な業態を厳選し、現地のニーズにきめ細やかに対応しながら東南アジア・米国を中心に多店舗展開を実現させていきたい考えです。

環境への取り組みの強化

 当社の事業活動は「持続可能な開発目標(SDGs)」と深い関わりがあることを認識しています。国連が定めるグローバル目標に即した施策の実行など、ESGへの取り組みを強化するため、2020年12月に「サステナビリティ委員会」を設置し、持続可能な社会の実現に向けて当社が果たすべき責務を推進する体制を強化しました。
 地球温暖化などの環境問題は、世界規模で解決されるべき喫緊の課題です。政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると表明しましたが、これを受け、当社も2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を設定しました。同時に短期目標として売上百万円に対するCO2排出量の年平均1%以上の改善、中期目標として2030年までに2018年比25%削減を目指していきます。CO2削減の取り組みとして、従来から店舗・工場・オフィスにおける節電活動や空調・暖房設備の省エネ化、物流車両の燃費改善や配送体制の最適化等を進めてきましたが、さらに推進していきます。また、太陽光など代替エネルギーや再生エネルギーへの移行のために準備研究を進め、脱炭素に向けての取り組みを加速させていきます。
 「食」を扱う企業として、食品ロス問題への対応も重要な責務です。当社は全国10か所の工場で必要な分だけ生産し定期的に店舗に配送する仕組みや、工場の廃棄食材は100%リサイクルしており、従来から食材廃棄の低減に努めています。店舗では、ご飯の量を選択可能にし、単品メニューをご提供するなど、お客様に残さず召し上がっていただける工夫をしています。また、昨年9月には、持ち帰り専用容器「もったいないパック」®を導入し、食べきれなかったメニューのお持ち帰りの推奨を店内のデジタルメニューブックやホームページで訴求し、食品ロス削減への取り組みを強化しています。
 石油由来プラスチックの使用削減についても、宅配・テイクアウトの包装容器やレジ袋をバイオマス素材や紙原料への切り替えを進めています。調達・生産から店舗運営まで、当社の商品・サービス・企業活動を通じて、地球環境保全と持続可能な社会の発展に向けての責任を果たしていきます。

株主還元方針について

 当社は、約30%の配当性向を目標に、株主の皆さまへ継続的な配当を実施していくことを基本方針としています。しかしながら2020年度は多額の損失を計上しており、当期の配当については、財務の健全性維持の為、無配とさせていただきます。また、次期配当については、新型コロナウイルス感染症の影響、及び、財務状況を踏まえて慎重に検討させていただく為、現時点では未定としております。株主優待については、現行の優待制度の内容を継続とさせていただきます。



コロナ禍の外出自粛や営業時間短縮要請への対応は、テーブルサービスレストランとして厳しい事業運営を迫られましたが、拡大する宅配・テイクアウトの需要への対応を強化し、人々の日々の暮らしに必要不可欠な「食」のサービスを提供し続け、難局を乗り越えてきました。

私たちの経営理念は『価値ある豊かさの創造~食の未来を創造し 豊かな生活と社会の発展に貢献いたします~』です。

ポストコロナに向けて、経営基盤の強化と経営資源を最大限に活用し、社会に必要な企業としてさらなる成長を遂げ、「食」の分野で社会のインフラとしての役割を果たしてまいります。

ステークホルダーの皆様におかれましては、今後ともご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
 



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